こんにちは。コミュ障エンジニアのでっくんです。
今回は「これからの正義の話をしよう(マイケル・サンデル著)」を読んでみたので、内容を解説したいと思います。
3行で要約してみた
内容を3行にまとめてみました。
- 「正義」とはお金、権利、義務や名誉を分配するルールのこと
- 「お金、権利、義務や名誉」を公平に分配する方法は3つ
- 色々考えてきたけど、完璧な分配ルールは存在しない。お互いの考えを理解して尊重すべし!
本書は、「正義にかなう社会」とはどんな社会だろうか?と読者に問いかける内容になっています。
本書で「正義にかなう社会」とはお金、権利、義務や名誉が公平に分配される社会を指していることもポイントです。
考えてみると、私たちはお金、権利、義務や名誉を分け合って生きています。
ユニクロの柳井社長のような億万長者もいれば、明日食べていくのに苦労する人もいます。
就職活動も、優秀な人はいい会社に入れるし、就職できない人もいます。
税金も高額納税する人もいれば、少額で良い人もいます。
このように、社会では報酬、働ぎ口、税金の負担など、ありとあらゆるものを分け合って(奪い合って)います。
お金、権利、義務や名誉を分けあっていくためには、分け合っていくためのルールを決めないといけません。(多くの人が納得できるようなルールが望ましいです。)
本書では、この「分け合っていくためのルール」を「正義」と呼んでいます。
詳細解説
正義を語る上での3つのアプローチ
正義とは何か(収入や財産、義務や権利、権力や機会、職務や栄誉ーがどう分配されるか)を考える時、大きく3つの判断基準があるとサンデル教授は言います。
・福祉の最大化(できるだけ多くの人が幸せになるようにすべき!)
・自由の担保(個人の自由・権利を最優先すべき!自分のものは自分のもの!)
・美徳(正義は美徳や善き生と深いかかわりがある!)
本書ではそれぞれの主張の強みと弱みを検証しています。
福祉の最大化(多くの人が快楽、幸せを感じれる判断が正義である!)
一つ目の判断基準「福祉の最大化」は、「より多くの人が幸福を享受できるような分配にすべき!」とする考え方です。
昨年、定額給付金で、困窮した人だけに30万円配るか、みんなに10万円配るかで論争になりましたよね。
結果はより多くの人が利益を享受できる一律10万円!になった訳ですが、これはまさに「福祉の最大化」の観点が盛り込まれた判断だったと思います。
良い考えにも思いますが、この考えを突き詰めると人権を軽視することになりかねないとサンデル教授は警鐘を鳴らします。
「古代ローマでは、キリスト教徒をライオンに投げ与え、庶民の娯楽にしていた。「福祉の最大化」の原理に従えば、1人のキリスト教徒の犠牲よりも大衆の快楽が大きくなると
考えられる。この時キリスト教徒の人権は無視しても良いのだろうか?」
とサンデル教授は問いかけます。
このように、「福祉の最大化」を正義の唯一の判断基準にするのは難しいと言うのです。
自由の担保(個人の自由が大事!自分のものは自分のもの!)
二つ目の判断基準として示されるのが「自由の担保」です。最大限個人の選択、財産の保持が認められるべきで、
政治は個人の選択や財産の保持に介入すべきではない!という考え方です。このような考えを持った人を「リバタリアン」と呼ぶのだそうです。
個人が築いた富の所有権は個人にあるのだから、政府が介入して富を取り上げ、再分配するのは良くない、という考え方です。
コロナ禍では、経済活動の自粛要請が政府から出ましたよね。
コロナ禍であっても個人の判断で経済活動するのは自由だ!って主張しているホリエモンみたいな方は「自由の担保」を正義の基準にしていると言えます。
サンデル教授はアメリカの志願兵制度を例に出して「自由の担保」にも弱みがあると言います。
イラクでアメリカのために戦っている人々の圧倒的多数は都市部のスラム街や地方の貧しい地域の出身だ。(中略)志願兵制を支持する市場の論理に対する一つ目の反論は、不公正と強制にかかわるものだ。階級差別による不公正と経済的に恵まれないために、若者が大学教育やその他の利益と引き換えに自分の命を危険にさらすときに生じる強制である(本書より)
経済的な事情によって自由の選択肢が変わってくるんだから公正な自由の担保なんかできないよね、って話ですね。
美徳(正義は美徳や善き生と深いかかわりがある!)
この考え方は、現代人にはあまりなじまないかもしれません。
美徳って何?
本書では、「美徳」という言葉が沢山出てきます。本書では人が直感的に思う「善き社会で励奨されるべき生き方」を「美徳」と表現しています。美徳は人によって異なる、とも本書では書かれています。
本書では、正義と美徳は切り離すことができない!と語られています。人は何らかのコミュニティに属しそれぞれのコミュニティに貢献する役割を担っていますよね。
二人の子供が溺れていて、一人しか助ける時間がないとしよう。一人はあなたの子供、もう一人は赤の他人の子供だ。自分の子供を助けるのは間違っているだろうか。(本書より)
たしかに国は自国民に対し、他国民よりも多くのものを与える。たとえば、アメリカ国民にはさまざまな形の公的サービス(中略)が提供されるが、これらは外国人には提供されない。
~(中略)~
われわれには同国人のニーズには応える特別な責任があるが、世界の誰にでも同じ責任を持つわけではないことにほとんどの人は賛同する。この区別は道徳的に擁護できるだろうか。(本書より)
本書では全ての人に中立な「正義」は存在しないことが、本書では語られています。
まとめ
本書で語られる「正義」の議論を整理すると以下のようになります。
①正義って何?
②すべての人に中立な正義ってあるの?
③中立な正義ってないんじゃない?人それぞれ考える正義って違うよね。だから、お互いの考える「正義」を尊重して議論していくことが大事だよね!
自分の考える正義って絶対に正しいんだ!って思いがちですよね。でも正義に絶対なんかなくて、傲慢にならず、人の意見にも耳を傾けていくことが大切なのかなと思いました。
とっても考えさせられる本でおススメです!
総合満足度: (5/5)